BOOK
オヤジ達よバーへ行こう5
オヤジDの場合 まあまあ同じ考えやん
某関西の歴史ある会社の社長さんで、とても人当たりがよくて、年下の私にでもとてもフレンドリーに接してくれる。
だから「社長」と呼ばずにオヤジ。
彼の祖父が創始者のソース会社は、関西初のソース屋さん。
ある年、創始者の名前が冠されたこれまた旨いソースが発売された。
「これ旨いで! 一本持ってきたで! マスター!プレゼントや!」
私は戴いた
「何にかけましょ?」
「そんなもん何でもええやないか!牡蠣にでも ヘレカツでも・・・」
で、後日焼きそば作って贅沢にかけて食ったった。
「旨い!」
しばらくカウンターに置いておき、こんな高級らしい・・とか、こんな歴史があるらしい・・とか話を膨らませていた。
数日後、その社長、オヤジ来店。
「あ、この前いただいた、確か・・・敬七朗ソース・・でしたよね?焼きそば作って食いました。旨かったです」
「!? 焼きそば作ったぁ?・・! 何すんねん!!まあ、それもありかもな」
数年後…某コンビニとのコラボで
"敬七朗ソースで作った焼きそば"
と、コンビニ店舗に並ぶ。
旨いからよく売れたそうな。
オヤジ、まあまあ同じこと考えてるやん!
それでね。オヤジ、あの店・・ は、惜しかったなぁ。
オヤジは仲間の集合場所。俺は、大人の遊びの殿堂。
熟年以上老人未満が、昼間から酒を煽ってワイワイやってる。
片隅で古―いピンボールがガチャガチャ…ビリヤードがカーン!
奥の隅では、手積みの麻雀がジャラジャラ。
でも、世界の酒が揃っている。
な、オヤジ・・・・
まあまあ同じ夢やったやろ
まあまあ・・・。
オヤジDの飲み物は?
これまた オヤジの名前を取った「カクテルY」が存在するダーク・ラムに少々のグレープフルーツ、レモンETC。
ラムの選定と混ぜ合わせる物の具合で、とにかくバランス良く、最近オヤジはロックヒルファームというバーボンもよく飲む。
キャップ部分に馬の飾りのついたブラントンの上級品。
何故かオヤジ達は バーボンがヒットする。
ダークラムの歴史を遡って行くと、少し悲しい労働者との関係も目にすることになる。
労働者、男臭さ、懐かしさ・・・
オヤジには付き物やな
つづく
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オヤジ達よバーへ行こう4
オヤジCの場合 昔話は自分を昔のままと思い込む
大きな会社というものは全国または世界に数々の支店支社を持ち転勤があたりまえ。
出会った時は、彼が三十五歳 私が三十三歳。
彼が神戸営業所所長だった頃、とにかく体育会系の営業所で、縦の統制が見事にとれていた。
しかし彼の部下に対する愛情は半端ではなく、クリスマスに彼女のいない若い部下を六、七人連れて、飯を食って、私の店で飲んで、夜中までカラオケに行き爆発した。
二時前に閉店し私も合流したのだが、本当に楽しそうに最高に盛り上げていた。
彼も父で、小さなお嬢さん二人居てはるのに、若手のために歌って踊った。
今、そんなオヤジは居るか?
彼の愛弟子の彼女が久しぶりに東京から来ていて、所長、愛弟子、その彼女の三人で来店されていた。
彼女は酒豪で、飲める輩はすべて所長のお気に入りだ。
さあ 何杯強いお酒を飲みほしただろうか・・・
愛弟子は白目むき気味。
彼女 きりりっ!すごい。
「もう、早く連れて帰ってあげなさい」
と先に二人をホテルに帰らせてあげた。
さすが優しい所長だな。
と、思ってた矢先、一人残った所長は
「よしっ これでもう今日はセックス出来んやろ」
「!」
なんと時間をかけた、手の込んだ大人の嫌がらせだ。
そんな彼が約十五年の時を経て、神戸営業所長兼、大阪支店長として関西に帰ってきた。
名刺の頭に、大きな大きな肩書きをもって。
少しも変わってなかった。
むしろ私と店が老けたかも知れない。
帰ってきてから彼にも変化が。
そう、娘さんが嫁いで行ったのだ。
お孫さんも出来て、名実ともに「ジィジ」になった。
数年過ぎた今年、彼はまた東京への辞令が。
移動前に神戸の懐かしい店を食べ歩き、昔の同僚などを引き連れて七名で来店
「いやあ 本当に懐かしい」
と、口々に。
安いバーボンをダブルで五杯ずつ、皆一緒。
飯食って、ビール、焼酎をたらふくあおってからのバーボンだった。
「やっぱり凄いな この頃のオヤジ達は・・・」
皆様が帰られてから、一時間半ほど経った頃に、彼からスマホに、メッセージが届いた。
「マスター、今日も楽しかったありがとう。今大阪に着いてゲロ吐きました。やっぱり、もう若くないですねえ」
昔話の中に 昔のままの自分がいて・・
でも今の自分は そんなに若くない。
オヤジCの飲み物は?
漠然と「安いバーボン」とは いうものの、値段の問題ではない。
日本の酒類、級表示が平成四年に廃止になったり酒税法の改正、並行輸入等の拡大、その他諸々で、昔とても高価だったバーボン・ウィスキーが近年お手軽に飲める。
かといって、「安物」ではない。
懐かしさラベルの柄、響き。
オヤジには分かる「何か」がそこにある
つづく
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