BOOK
オヤジ オヤジ予備軍 そして 「その次の世代」
カレー屋 Mドリル Fくんの場合
1995年の震災以後、生田新道に移転してきたわたしは、元町駅から鯉川筋を北へ向かい、出勤するときに神戸名物「イカリ山」を見ながら「県庁所在地」の責任を感じて出勤する日々。
私の店からも当初は「イカリ山」が 覗き見えてたものだが、時代とともに 高層マンションもかなり増え、今は店からは見えない。
復活、発展と共に街の風景も変わる。
カレー屋Fくんは、自分の店をオープンして3年程だがTHE神戸「ポート・タワー」を目の前に据えて戦う。
私の若い頃「カレーショップ」たる所は、今の「ココイチ」くらいの店がほとんどで、インドカレーとか唱っていたり、インド人がびっくりしたり、くちびるがぶ厚い黒い人形の絵が描かれているくらい。
ま、そこそこ旨いFくんのカレー屋さんは、オヤジにとってはとても斬新で、ワン・プレートの上に2種類の味のカレーが選べて、玄米 白米も乗せてある。
「旨い!」
オヤジらも一度食べていただきたい。
店内音楽のチョイスも、とてもよい。
私らの年代では、考えもつかないアイデアが随所に散らばっている。
Fくんは、たまに私の店に来店する。
「よう頑張ってるみたいやなあ」
「いやぁまだまだですよ。僕なんか」
謙虚な照れ笑いにも、彼の人間性の良さが垣間見える。
「生田新道には凄い妖怪が居ますからね。僕ら足元にもおよびませんよ」
「?妖怪って?」
「マスター。あなたですよ。あなた。こんなお客様の数を一人でさばいてるなんて、考えられませんわ!」
「あ、いやいやFくん。俺は妖怪ではなく老獣。生田新道の老獣なんや。牙の折れた。だから皆俺を介護してくれてて、店が機能してるんや」
こんな会話が成り立つF君たちが「オヤジ」や「オヤジ予備軍」の後の世代を引っ張る。
そして街を引っ張る。
Fくんは昔私の知り合いのTくんが経営するDDというバーで、アルバイトしていたこともあり、お酒の知識もその辺のオヤジよりあるほうだ。
「父親がジャックダニエル好きなんで、一緒に飲むときはそれです」
「そうかぁ。そらあ親孝行やなあ」
父親の好みの酒で一杯飲る。
いい話やねえ。
こんなに考えてる「次の世代」も、街には居てるんだから、元気をもらったり、与えたりする為に、どんどん街に向かえ!
「オヤジ」「オヤジ予備軍」!
老獣は 知らん間に 消えるからな。
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